滋賀の文化振興施策 5 取り組みの方向
(3) 滋賀を舞台にした新しい生活文化の創造と発信
自然に生かされ、自然を守ってきた先人のこころや、社会への貢献・人間関係を大切にしてきた近江商人の生活信条は、現代人からみても学ぶべき示唆と教訓に満ちています。これらをいま一度振り返り、足元を見つめ直すことで、私たちの日々の生活の充実や生きがいをもたらす生活文化の創造をめざすとともに、滋賀の志として内外に向けて発信します。
[1] 琵琶湖への感謝の気持ちの実践
400万年という世界的にも古い歴史を持つ琵琶湖は、私たちの生命と暮らしの営みを支えてきました。また、周辺の森林や河川、里山、湖辺等は、人々にやすらぎと潤いをもたらしてきました。私たちの先人は、自然の循環やリズムに寄り添いながら湖と共存し、独自の文化を培ってきたわけです。
近年、琵琶湖を取り巻く環境が大きく変化し、その保全に向けたさまざまな取り組みにもかかわらず依然として厳しい状況が続いている中、新たな視点から琵琶湖との付き合い方が提案されています。今、改めて「マザーレイク21計画」(琵琶湖総合保全整備計画)に沿って、琵琶湖に感謝し、一人ひとりが水循環についての理解を深めるとともに、水環境保全への地道な取り組みを県民総ぐるみで進めなければなりません。さらに、それを継続的な取り組みにつなげることにより、琵琶湖を健全な姿で次世代に継承し、環境面に十分配慮した新たな生活文化が人々の暮らしの中に定着していくよう努めます。
この場合、県民や事業者等が環境負荷の少ない生活や産業活動を実践することが基本となりますが、地域により密着した市町村の役割が重要であり、互いに連携を図りつつ水環境保全に取り組みます。
■取り組み事例
- 県内各地で展開される河川流域単位の住民主体の琵琶湖保全活動
- 環境管理の国際規格ISO14001の考え方を取り入れた小・中・高校での取り組み
- 自然の仕組みや人と自然とのかかわりを学習する学校の「ビオトープ」
- びわ湖フローティングスクール「うみのこ」による環境学習の推進
赤野井湾探検会
[2] みどりや森が持つ多面的な機能の活用
みどりの減少や環境問題への人々の関心の高まりなどを背景に、私たちは心豊かな暮らしにとってみどりや森が欠くことのできないものであることを強く意識するようになりました。
森の中に入り、全身で感じ、全身で考え、感動を得ることで、自然の一部として生かされているという一体感や共生する命への慈しみを感じるとともに、人々の心にぬくもりや癒し、安らぎ、元気を取り戻すことができます。
そこで、みどりを生活循環の中に利用してきた先人のライフスタイルに学ぶ観点から、みどりや森が持つ多様な機能を生活に活かし、人とみどりが共に生きてきた文化を後世に引き継いでいきます。
21世紀を担う子どもたち、特に、脳や感覚器官の発達期である幼児期に意識的に自然に触れる時間をつくり、豊かな心を育てていくことが重要ですが、その舞台の一つとして身近にある里山や森がふさわしいと考えます。大人も子どもの感性に触れ、未来のために一緒になって楽しみながら環境問題への意識を高め、主体的な環境保全活動の参加につながるよう、本県の歴史・風土・文化等を活かした体系的な環境学習を推進するための仕組みづくりのほか、さまざまな県民参加型の環境学習、自然学習を積極的に推進していきます。里山や森を舞台にしたさまざまな交流の中から、人とひととのつながりが強まるとともに、木工芸などの芸術文化の創造や、地域独自の木材の使い方・炭焼きなどの伝統文化の継承にもつながっていくものと考えています。
■取り組み事例
- 里山や農園等を活用した子どもの自然体験学習
- 淡海森林ボランティアや愛知川の「河辺いきものの森」の整備など、地域の森や里山を育てる活動
- 県民とのパートナーシップによる「びわこ地球市民の森」づくり
「河辺いきものの森」での保全活動
[3] スリムでシンプルな暮らしの実現
近江商人の生きざまの一つに、「しまつする」というのがありますが、これは倹約・節約だけを示すものではなく、ものを大切にするいわゆる4つのR(リデュース(ごみ減量)・リユース(再利用)・リサイクル(再資源化)・リジェネレーション(再生品の選択))の発想も含まれており、今の私たちの生活に大きな示唆を与えてくれます。
消費面から環境問題を考えることが、身近な環境問題への取り組みの第一歩であり、たくさんのひとが少しずつでも課題を考え取り組むことが社会全体の意識の向上につながり、成果も上がります。環境に配慮して買い物をするのは、生活を自分でつくる楽しさがあるということであり、そこに個性が生まれる余地もあることから、新しいライフスタイル創造の一つであると考えます。
そこで、こうした生活の知恵に学び、「足(た)るを知る」「もったいない」という考え方をベースに、スリムでシンプルな新しい環境習慣の確立〜暮らしの中で物を「買う」とき、「使う」とき、「捨てる」とき環境にやさしい行動をとること〜を滋賀から提唱し、県民、事業者、行政が一体となった県民総ぐるみ運動として展開します。
■取り組み事例
- 環境にやさしい容器包装の基準づくりやグリーン購入意識の向上などを目指すメーカー、研究者などの取り組み
- 全国で初めての地域におけるグリーン購入のネットワーク化である「滋賀グリーン購入ネットワーク」の活動
- マイバッグ(お買い物袋)持参キャンペーンの実施
お買い物袋持参キャンペーン
[4] 人権が尊重される豊かな社会の実現
どのような社会、またいかなる時代にあっても、私たちの行動の基本になるのは他人への思いやりの心ですが、近江商人の経営哲学である「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)の考え方は他人や社会への思いやりの表明であり、すべての顧客(人)を平等にもてなすというその発想は、今日の人権尊重の精神にもつながるものと考えられます。
こうした普遍的な価値を今一度見つめ直すことを通して、性別・国籍・障害の有無など、日々の暮らしの中にあるさまざまな違いを認め合い、すべての人の人権が尊重され、誰もが生き生きと暮らすことのできる、一人ひとりが輝く滋賀の実現を目指します。
例えば、男女がそれぞれの個性と能力を発揮し社会のあらゆる分野に参画できるための条件整備、外国人も暮らしやすい多様性を認め合い支え合う国際共存のコミュニティづくり、ユニバーサルデザインによるまちづくりなど、県行政のあらゆる施策に人権尊重の理念を取り込み、体系的に取り組んでいきます。
■取り組み事例
- 各地のボランティア・グループによる在住外国人が地域で安心して暮らせるためのさまざまな支援活動
- 公共施設や鉄道施設等のバリアフリー化やユニバーサルデザイン化のためのまちの点検と提案
彦根の国際交流団体の活動
[5] 誰もが個性的な生き方のできる社会の実現
我が国の障害者福祉の草創期に、糸賀一雄氏をはじめとする滋賀県の先人が全国のさきがけとなる取り組みを行ったことは広く知られていますが、こうした先駆的な福祉の心を受け継ぎ、未来に活かしていきます。
そのうえで、誰もが生涯を通じて生きがいを持ち、健康を育む中で個性的な生き方のできる健康福祉社会の実現に向け、次のような地域づくりを進めます。
健康福祉総合ビジョンに沿って、県民の参画を得ながら新たなニーズに対応していく滋賀ならではの共助のシステムと滋賀の健康福祉水準向上システムを構築し、共に生き共に支える安心と生きがいのある健康福祉社会の創造をめざします。
県民一人ひとりが生涯を通じて健康で生きがいをもって暮らせるよう、健康的な生活習慣が日常の中に定着するとともに、地域の絆を大切にしながら、新たな健康課題への対応に住民が積極的に参加するような社会の創造に努めます。
健康づくりの重要な柱であるスポーツや運動が人々の生活に根付き、健康で明るく活力に満ちた「スポーツ県・滋賀」を目指し、地域における生涯スポーツの環境づくりに努めるとともに、琵琶湖をはじめ滋賀の自然を活かした豊かなスポーツライフを創造します。
こうした積み重ねが、健康福祉分野における新たな生活文化の創造につながっていくものと考えます。
■取り組み事例
- 高齢者が地域で安心して楽しく暮らせるための自治会等による助け合い、見守り運動
- 既に自立生活している障害者の企画運営による自立生活プログラム講座の開催
- 「滋賀の健康福祉を実践する130人会議」の取り組み
- 学校体育施設や公共スポーツ施設を拠点としながら、民間スポーツ施設も活用した、地域住民の誰もが参加できる総合型地域スポーツクラブの展開
「滋賀の健康福祉を実践する130人会議」の取り組み