弦楽器とは、その名の通り弦を使って演奏する楽器を指します。弦楽器といえばまずヴァイオリンが浮かぶかもしれません。ヴァイオリンのように、弓を使って弦をこすり音を出す弦楽器のことを擦弦楽器といいます。ヴァイオリンのほかにはヴィオラ、チェロ、コントラバスといった楽器がこれに属します。一方、弦をはじくことで音を出す弦楽器は撥弦楽器といいます。身近なものではギターやエレキベース、ハープなどがこの仲間であり、日本の伝統的な楽器である筝やヨーロッパの古楽器であるチェンバロなどもこれに分類されます。
弦楽器のもつ一番の魅力は、演奏を通して楽器を育てることができる点でしょう。多くの楽器、たとえばピアノ、フルート、マリンバ、パーカッションなどは楽器の状態が比較的安定しており、これらを演奏する場合はあらかじめ音程や音色を調整しておきます。一方、例外はあるものの、多くの弦楽器は演奏の際に自分で音程を定めます。音色は環境に非常に影響されやすく、演奏の仕方や楽器の扱い方によってどんどん変化します。このため、自分が奏者として成長することは楽器を成長させることでもあります。よい音を鳴らす楽器づくりこそが弦楽器の醍醐味であり、楽器への愛着はどの楽器よりも強くなるといえます。
表現が多彩であることも弦楽器の魅力です。多くの楽器では音と音の境界がはっきりしています。鳴らす音と出る音は1対1で対応しており、その音のまとまりを考えることが表現となります。しかし弦楽器はそうした音の区切りをもちません。同じ音を出すにも「高めの音」、「低めの音」といった変化をつけることができ、離れた2つの音程の間の音を連続的に出すことで繋げるグリッサンドなどの技法は弦楽器の得意分野でもあります。そのため、同じ譜面を演奏するときでも奏者の意志が反映されやすく、強い個性を出すことができます。これは弦楽器の大きな魅力です。そういった意味で、弦楽器は人の声に最も近い楽器であると考えられます。
アンサンブルの機会が多いことも弦楽器のよいところのひとつです。誰もがよく知るオーケストラは弦楽器が中心に構成しているため、何十人という単位で演奏できるうえ、楽器内でも複数のパートに分かれることで合奏する楽しさを強く感じることができます。そのため趣味で習っている場合でも演奏の機会が多く、気軽に管弦楽を楽しめます。
また、弦楽器は古くから親しまれてきた楽器なので、偉大な作曲家たちの作品が多く残っています。ソロ用の作品やオーケストラ作品だけでなく、弦楽三重奏、弦楽四重奏などという小規模な弦楽合奏や弦楽八重奏など大規模な弦楽合奏、ピアノ三重奏、フルート四重奏などほかの楽器を主役に据えたアンサンブルなどさまざまなアンサンブル作品があります。ほかのパートや異なる楽器と合わせて演奏することには独奏とはまた違った喜びがあり、これに心を惹かれる人も多くいます。
その性質にも演奏形態にも魅力がたくさん詰まった弦楽器。気になるものがあれば、まずはぜひ実際に演奏会に足を運んでその音を聴いてみてください。
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